映画 それから

原作は夏目漱石の同名小説で、監督は「家族ゲーム」
に続いて森田芳光。出演は松田優作の他、藤谷美和
子、小林薫、笠智衆、中村嘉葎雄などです。

主人公の長井代助(松田優作)は、東京帝国大学を卒
業した後、仕事にも就かずに実家からもらうお金で
読書や演奏会などを楽しむ高等遊民の30歳です。

一方代助の友人の平岡常次郎(小林薫)は、銀行に就
職して京阪の支店に勤務しています。そして代助と
常次郎の共通の知人である菅沼(風間杜夫)の妹三千
代(藤谷美和子)と常次郎は結婚します。

しかし二人の間に生れた子供はすぐに亡くなり、三
千代も心臓を悪くしてしますのです。

ある時、平岡が代助のところを訪れ、部下の使い込み
の責任を取らされて銀行を辞めたことを話します。そ
して代助に仕事の斡旋を依頼するのです。

ある日代助は平岡家を訪ね、久しぶりに三千代と再会
します。元々三千代を愛していたが常次郎のために譲
った代助は、今でも美しい三千代に心をときめかせま
す。その後三千代が代助のもとに借金の申し込みにや
って来るのでした。

代助は兄の誠吾(中村嘉葎雄)のもとへ行き、平岡夫妻
のために借金の申込みと仕事の斡旋の依頼をします。
しかし、いずれもあっさり断られてしまい、なんとか
兄嫁の梅子(草笛光子)から200円を借りることができ
たのです。

代助は三千代にお金を渡しに行きます。三千代は喜び
また、常次郎が冷たく接することを代助に話すのです。
子供が亡くなってから、2人の仲はうまくいっていない
ようなのです。

しかし代助は、前から勧められていた佐川家の令嬢(美
保純)との見合いを断りきれずに、見合いをすることに
なります。実家の会社がある疑獄事件に関わり、父の
徳(笠智衆)と兄の誠吾は、代助を資産家の娘と結婚さ
せようという腹積もりなのです。しかし三千代に思い
を寄せる代助は、好きでもない女性との結婚を考えら
れないのです。

その後も何かと用もないのに、用を作って三千代と
会い続ける代助。常次郎は漸く新聞社の職を手にし
ますが、三千代の心が他の男にあることで心が荒み
芸者遊びで放蕩するのでした。

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なかなか踏ん切りのつかない代助でしたが、ついに
三千代に「僕の存在には、あなたが必要だ。」と思
いを告白します。そして三千代もそれを受け入れます。

そして三千代は常次郎に代助のことを話します。怒
る常次郎に三千代は「死ぬつもりで覚悟を決めてい
る。」というのでした。また代助も常次郎に会い、
三千代をくれないかと告げます。常次郎は承諾し、
絶交を言い渡すのでした。

さらに代助は父にも報告に行くのですが、怒った常
次郎が、手紙で父と兄に既に知らせていたのです。
代助は出て行けと言われ、親子の縁を切られてし
まいます。代助は黙って出ていくしかありませんで
した。

さすが原作が夏目漱石ですから、内容が奥深いで
す。人間としての生き方、考え方が問われていると
感じました。生きていくことということは、容易な
ことではありません。実家からお金をもらって、身
の回りのことも、全て人にやってもらっているよう
な高等遊民には、生きる厳しさは理解出来ないので
す。観念的に、食うために働くことを軽蔑している
だけなのです。そういう意味で、代助は自身の生き
方の甘さがあったわけですから、三千代を手に入れ
た代償として、友人も家族も失う結果は自業自得で
あるといえるでしょう。

松田優作は、何の役をやっても違和感なく演じま
すね。原作を読んだイメージとは違うんですが、映
画を観ると、代助松田優作バージョンがきちんと
成立しているんです。もちろん代助と対照的な役
柄を演じる小林薫さんや、ヒロインの藤谷美和子
さんも素晴らしいです。ちなみに小林薫さんは本作
で、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞さ
れています。


それから [ 松田優作 ]

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