原作は森村誠一、監督は佐藤純彌、制作は
角川春樹です。プロ・アマ問わずで公募され、
松山善三の脚本が入選し、結末は原作と異
なるものとなっています。1977年公開です。
東京の赤坂の高層ホテルであるロイヤルホ
テルの、展望レストランのある最上階に到着
したエレベーター内で、黒人青年ジョニー・
ヘイワード(ジョー山中)が死亡します。
棟居刑事(松田優作)らの捜査により、ジョニー
は死の直前に「ストーハ」という言葉を残して
いたことが判明します。そしてその言葉は「ス
トローハット」麦わら帽子のことではないかと
推理します。
そしてアメリカまで捜査の手を伸ばした棟居
は、ジョニーが日本へ出発前に「キスミーへ
行く」と言っていたことや、ニューヨーク市警
のケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)
により、ジョニーは、当り屋の父が豪から貰っ
た解決金6000ドルを日本への旅費として譲り受
けたことが分かります。
そしてジョニーが日本にやっってきたのは、
日本人の母親に会うためであることが分かり
ます。そんな時、妻のなおみを探す夫小山田
(長門裕之)から、なおみが最後にいた場所
に落ちていた珍しい時計が、ファッションデ
ザイナーの八杉恭子(岡田茉莉子)が購入した
ものであると聞いた棟居は、恭子に会いに行
きます。
恭子は息子の恭平(岩城滉一)が、なおみを
車ではねて死体を海に捨てたことを聞いて、
恭平をニューヨークに逃がしていたのです。
棟居は恭子を見て、終戦直後の闇市で米兵
に恭子が襲われていたところを、棟居の父親
が助け、その際米兵にリンチに遭った父は、
その傷が原因で死亡したことを思い出します。
捜査が進む中で、ジョニーが言った「キスミー」
は、ジョニーが持っていた西条八十詩集から、
群馬県の霧積(キリズミ)であることが分かり
ます。
霧積に向かった棟居は、ジョニーの事を知って
いる中山たねという老婆に会おうとしますが、
既に何者かに殺されていたのです。しかしたね
の知り合いから、八杉恭子が戦後進駐軍向け
の横須賀のバーで働いていたことを掴みます。
そして棟居は、八杉恭子がジョニーの母親で、
ジョニーは母の恭子に会うために日本に来て、
恭子に殺されたのではないかと推測します。
そこで確証を得るために、ニューヨークへ飛び、
シュフタン刑事とともにジョニーの父親を探し
ます。その時棟居は、シュフタンの手の甲に、
自分の父親がリンチされた時の米兵と同じ龍
の入れ墨があるのを目にするのです。
原作も重厚なテーマで、深く考えさせられる
内容ですが、映画の方も劣らないくらいに、
各出演者の演技も素晴らしく、見応えがある
内容となっています。
ラストシーンは、本来無言のところを、松田優
作が自分自身の母親に対する強い思いから、
セリフを付けたいと佐藤純彌監督に要望した
ことも有名です。
とにもかくにも、松田優作の演技はファンのみ
ならずとも、評価が高いんじゃないでしょうか。
最後の八杉恭子に自供をさせるシーンは見事
だと思います。
罪を犯した人間は、どうやって人間であることを
証明できるのか。考えさせられます。ジョー山中
の歌う主題歌もとても映画とマッチしています。