世の中の不思議さと人間への怪談じみた恐怖

今日の名言
人間の心には、もっとわけのわからない、おそろしいもの
がある。慾、と言っても、言いたりない、ヴァニティ、と
言っても、言いたりない、色と慾、とこう二つ並べても、言い
たりない、何だか自分にもわからぬが、人間の世の底に、経済
だけでない、へんに怪談じみたものがあるような気がして、
その怪談におびえ切っている自分には、所謂唯物論を、水の低き
に流れるように自然に肯定しながらも、しかし、それに依って、
人間に対する恐怖から解放せられ、青葉に向って眼をひらき、
希望のよろこびを感ずるなどという事は出来ないのでした。
(「人間失格」より新潮文庫)

人間に対する恐怖を感じてしまうと、もうどのような理論を聞い
たところで、生きる希望は芽生えることがないんですね。

相手が何を考えているのか分からない、相手の一挙手一投足が
気になりすぎて、怒らせでもしたら、自分に対して酷い仕返しを
してくるのではないか、気になって仕方がないようになる。

そこまでになってしまうくらいに神経が繊細だと、もう悲劇と
しか言いようがないんじゃないかと思います。

私のように、凡人はどこかで妥協するというか、諦めるというか、
必要以上に気にしすぎないようにしないと、生きていけないと
割り切れます。

でも、あまりに繊細で真面目すぎると、そういう割り切りができ
ないので、世の中で生きることが、非常に難事業になるのだと
思います。

でもその方が、まともな神経であるなような気がします。私は既
に世の中の汚さ、狡猾さに汚染されていると思うとやりきれない
思いがします。

人間失格改版 [ 太宰治 ]
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