今日の名言
「じぶんで、したことは、そのように、はっきり言わなければ、
かくめいも何も、おこなわれません。じぶんで、そうしても、
他におこないをしたく思って、にんげんは、こうしなければな
らぬ、などとおっしゃっているうちは、にんげんの底からの革命
が、いつまでも、できないのです。」
(「かくめい」より「太宰治全集10」ちくま文庫収録)
戦後間もない頃に書かれたこの作品は、上記のみで全文です。
でも、メッセージを伝える力の有り無しは、決して文章の量
では無いということが、この作品から分かります。
日本は戦前と戦後とでまるっきり、政治体制が変わりました。
まるで革命が起こったかのごときの変わりようです。
しかし、これはあくまで戦争に負けたことが原因となって
起こった結果です。ですから、真の革命が起こったとは言え
ません。
だから、自分がしたことをはっきりと言う。そしてこうしなければ
ならないとなどと理想を掲げるだけでは、決して真の革命すなわち、
にんげんの底からの革命はできないということなのでしょう。
戦時中と戦後で、手の平を返すがごときに、まるっきり言うことや
行動が変わり、国民の犠牲を顧みず、自己保身ばかりを考えていた
政治家や官僚に対して、太宰治の強烈な批判を感じられるのではない
でしょうか。
このように、大勢に流されない太宰治の反骨精神には、強く心を惹かれ
ます。