能力は間単に進歩するか

今日の名言
「変らないという事、その事だけでも、並たいていのものじゃ
ないんだ。いわんや、芸の上の進歩とか、大飛躍とかいうものは、
ほとんど製作者自身には考えられぬくらいのおそろしいもので、
それこそ天意を待つより他に仕方のないものだ。紙一重のわずか
な進歩だって、どうして、どうして。自分では絶えず工夫して進
んでいるつもりでも、はたからはまず、現状維持くらいにしか見
えないものです。製作の経験も何もない野次馬たちが、どうもあ
の作家には飛躍が無い、十年一日の如しだね、なんて生意気な事
を言っていますが、その十年一日が、どれだけの修業に依って持
ち堪えられているものかまるでご存じがないのです。権威ある批
評をしようと思ったら、まず、ご自分でも或る程度まで製作の苦
労をなめてみる事ですね。」
(「炎天汗談」より「道化の精神」大和出版収録」)

芸術のレベルを一定に保つことの難しさは、凡人にはなかなか
理解できないところです。ただ体力や知能というレベルのもの
でも、確かに年齢とともに衰えるわかですから、やはり芸術の
レベルを保つことも、何の努力もなしには難しいような気がし
ます。ましてや進歩する、レベルアップするとなればなおさら              でしょう。

今の世の中でも軽々しく他人を批判する人が数多くいると思い
ますが、太宰治のいうように苦労をなめたこともない人は、簡単
に進歩しているかどうかなんて批判すべきではないですね。

【中古】 道化の精神 / 太宰治

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