上品な人の生活を獲得すると誰かを裏切る事になる

今日の名言
秩序ある生活と、アルコールやニコチンを抜いた清潔な
からだを純白のシーツに横たえる事とを、いつも念願にし
ていながら、私は薄汚い泥酔者として場末の露地をうろ
つきまわっていたのである。なぜ、そのような結果になって
しまうのだろう。それを今ここで、二言か三言で説明し去る
のも、あんまりいい気なもののように思われる。それは私
たちの年代の、日本の知識人全部の問題かも知れない。
私のこれまでの作品ことごとくを挙げて答えてもなお足りず
とする大きい問題かも知れない。
(「十五年間」より「グッド・バイ」新潮文庫収録)

太宰治の作家としてのジレンマが表れているのではないで
しょうか。

秩序ある生活を送り、アルコールやニコチンを抜いて、清潔な
体を純白のシーツに横たえることで、太宰治自身が変わって
しまうことを恐れているのでしょう。

この名言が出てきた後にはっきり、 「それは何としても否定
できない魅力である!」という言葉が出てきています。

魅力的なことではあるが、そうすることで太宰治が最も嫌悪
する偽善者、半可通、堕落、俗物、気取った色男のようになる
ことを嫌っているわけです。

やはりこの名言のもう少し後に、「私はそのような成行きに対
して、極度におびえていた」という言葉も出てきます。

それで、太宰治は家庭生活を次々に破壊するのです。「上品な
生活を 獲得したならば、それは明らかに誰かを裏切った事に
なると考えていた」とも書いています。

自分の信念を貫き通すことと、家庭生活の安泰を保つことは、
やはり難しい問題なのだと思います。
グッド・バイ改版 [ 太宰治 ]
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