今日の名言
「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえ
すればいいのよ」(「ヴィヨン妻」新潮文庫より)
ヴィヨンの妻の一番最後の主人公の女性が語った言葉です。
女性は強いです。それに引き換え男は弱い。
男はすぐに、見栄を張ったり、虚栄心を満たそうとしたり
して、外面を良くしや体裁をつくろう事ばかりします。ま
たいつも不安や恐怖に苛まれていて、あまりにも脆いです。
ヴィヨンの妻の主人公の夫である大谷がまさにそうではな
いでしょうか。
これと対照的なのが、主人公である大谷の妻です。夫の大
谷がほとんど家に帰ってこなくても、何も不平は言わず、
夫が料理屋からお金を盗んでも、妻は自ら人質になってその
お店で働きます。
夫が頻繁にそのお店に行っているので、そこで働いていれ
ば夫に会えるということで、なんでこんないい事に気づか
なかったのかしらと言う場面は、何とも言えない夫への思
いや家庭を守りたいという悲痛な思いが伝わります。
だらしない夫と異なり、妻は生きていさえいればそれでい
いと言い放ちます。聖書に影響を受けた太宰治の気持ちが、
妻にだらしない夫でも許させているということなのでしょ
うか。とにかくこの言葉に、女性の強さ、子供や家庭を守
ろうとする母性の強さが表れているような気がします。