今日の名言
「生きているのが、悲しくて仕様が無いんだよ。わびしさだの、
淋しさだの、そんなゆとりのあるものでなくて、悲しいんだ。
陰気くさい、嘆きの溜息が四方の壁から聞えている時、自分たち
だけの幸福なんてある筈は無いじゃないか。自分の幸福も光栄も、
生きているうちには決して無いとわかった時、ひとは、どんな
気持になるものかね。努力。そんなものは、ただ、飢餓の野獣の
餌食になるだけだ。みじめな人が多すぎるよ。」
(「斜陽」より)
戦後一部の人間を除いて、みな辛く苦しい生活を余儀なくされ、
もう幸福などは見出だせない、生きているうちには決してないと
いう絶望の淵に立たされた人ばかりであったと思います。
一生懸命に努力したところで報われない、国のために命をかけて
戦争で戦っても報われない、頑張れば頑張るだけ惨めな、そんな
思いをすることが多かったのだと思います。
そして一部のの人間だけが私腹を肥やすばかりで、それはまるで
普通の人が頑張った努力が、私腹を肥やす人間の餌食になったかの
ようだったのではないでしょうか。それくらい惨めな状態の人ばか
りだったのでしょう。
もう死ぬしかない、死を覚悟して生きるしかない、そんな退廃的
な状態の中で幸福なんて決してないという絶望が覆いかぶさる世界。
現代においても、いろんな意味で絶望の淵に立っている人もいると
思います。
いつ自分もそんな状態に陥るかもしれません。そうなならないよう
にするためにも、今は努力が全く報われない当時とは少しは違いま
すから、今を精一杯生きるようにしたいものです。
斜陽改版 [ 太宰治 ]