苦しいときこそ、楽しい話を創る

今日の名言
「私は家庭に在あっては、いつも冗談を言っている。それこそ
「心には悩みわずらう」事の多いゆえに、「おもてには快楽」
をよそわざるを得ない、とでも言おうか。いや、家庭に在る時
ばかりでなく、私は人に接する時でも、心がどんなにつらくて
も、からだがどんなに苦しくても、ほとんど必死で、楽しい雰
囲気を創る事に努力する。そうして、客とわかれた後、私は
疲労によろめき、お金の事、道徳の事、自殺の事を考える。
いや、それは人に接する場合だけではない。小説を書く時も、
それと同じである。私は、悲しい時に、かえって軽い楽しい物
語の創造に努力する。自分では、もっとも、おいしい奉仕のつ
もりでいるのだが、人はそれに気づかず、太宰という作家も、
このごろは軽薄である、面白さだけで読者を釣る、すこぶる安
易、と私をさげすむ。」
(「桜桃」より「人間失格・桜桃」角川文庫収録)

つらく、苦しいときでも快楽を装うというのは、なかなか出来る
ことではないですね。

誰でも、楽しくもないのに楽しい振りは出来ませんから、普通は
自分のつらさや苦しさが顔や態度に出てしまうと思います。

そして小説も楽しい物語の創造を奉仕のつもりで行っているという            ところがまたすごいです。奉仕なわけですから私心を捨て見返りは            何も求めないということなのですから。

どうしてそこまでの思いを持って道化役を徹底できるのか、
凡人の私には計り知れませんが、だからこそ太宰治の小説は、
読者に強いインパクトを与えるのかもしれません。
人間失格・桜桃 新装版 (角川文庫)[本/雑誌] (文庫) / 太宰治
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